療養型病院長として今回の診療報酬改定に思うこと
今回の診療報酬改定は、地域包括ケアや在宅医療の推進、医療DXへの対応など、今後の医療提供体制の方向性を示した点では一定の評価ができます。しかし、療養型病院の立場から見ると、いくつかの重要な課題が十分に反映されていないと感じています。
まず、深刻な問題は諸物価高騰への対応です。電気代、ガス代、給食材料費、医薬品や医療材料費など、病院運営に必要なコストはこの数年で大幅に上昇しました。一方で、療養病床の収益構造は診療報酬に大きく依存しており、価格転嫁は不可能です。特に療養型病院は24時間365日患者を支える社会インフラでありながら、物価上昇への支援は十分とは言えません。医療従事者の処遇改善も求められる中、経営努力だけで吸収できる範囲を超えつつあります。
次に、今後急増が予想される「心不全パンデミック」への対応です。高齢化に伴い慢性心不全患者は急速に増加しており、急性期病院だけで完結できる時代ではありません。再入院予防、薬物調整、栄養管理、リハビリテーション、ACP支援など、療養型病院が果たす役割は極めて大きくなっています。しかし今回の改定では、心不全診療における療養型病院の位置づけや評価が十分に示されていません。
療養型病院は単なる「受け皿」ではなく、慢性心不全患者の病状安定化や再発予防を担う重要な医療機関です。今後は急性期・回復期・在宅をつなぐ中間的な機能として、療養型病院の役割を制度上明確に位置付ける必要があります。
さらに、地域包括ケアシステムの中で療養型病院は、医療依存度の高い高齢者の生活を支える最後の砦でもあります。誤嚥性肺炎、心不全、認知症、フレイル、多疾患併存など、複雑な病態を抱える患者が増加する中で、療養型病院への期待はむしろ高まっています。
超高齢社会を迎えた日本においては、急性期医療だけでなく、慢性期医療をどのように維持・発展させるかが医療政策の重要な課題です。今後の制度設計においては、物価高騰への継続的支援とともに、心不全をはじめとする高齢者慢性疾患に対する療養型病院の役割を明確に評価する仕組みが求められると考えます。
療養型病院は「治す医療」だけでなく、「支える医療」を担っています。その価値が診療報酬制度の中でより適切に評価されることを期待しています。

世界各地で戦争や紛争が続き、日本周辺の安全保障環境も一層厳しさを増しております。加えて、エネルギー価格の高騰や物価上昇は国民生活に大きな影響を及ぼし、不安が広がっております。こうした状況の背景には、各国におけるナショナリズムや利己的な動きがあるとも指摘されており、歴史の教訓を踏まえた冷静で協調的な国際対応が強く求められます。過去の大戦や感染症、経済危機の連鎖を繰り返すことのないよう、世界の指導者には賢明な判断と連携を期待したいところです。
一方、国内の医療を取り巻く環境も大きな転換期を迎えております。少子高齢化の進行により、国民皆保険制度の持続可能性が問われる中、医療需要の構造変化に伴い、外来患者数や手術件数の減少など、病院経営にも影響が及びつつあります。当院においても、療養型病院としての役割を見据え、持続可能な運営体制の構築が急務であると認識しております。そのような中、当院では生成AIの導入、タスクシフトの推進、多様な人材が活躍できるダイバーシティの推進など、時代に即した取り組みを積極的に進めており、一定の成果が現れ始めております。さらに本年度は、地域包括ケア病床の開設や訪問診療・在宅医療への積極的な関与を通じて、地域医療への貢献を一層強化し、病院機能の拡充を図ってまいります。
新年度は新たなスタッフを迎え、地域の皆様により一層信頼される医療機関を目指し、全職員一丸となって努めてまいります。すべてが「うまくいく(馬九行久)」一年となるよう精進してまいりますので、引き続き皆様のご支援とご指導を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
宮本 隆司 (みやもと たかし)
大分医科大学卒業 / 医学博士
職 歴 ;
大分医科大学医学部 第2外科
佐伯西田病院 外科
竹田医師会病院 外科
厚生連鶴見病院 外科
新別府病院 心臓血管外科
福岡市立こども病院 心臓血管外科
国立小児病院 心臓血管外科
東京大学医学部 胸部外科 助手
神奈川県立こども医療センター 心臓血管外科 医長
ドイツ小児心臓センター 心臓血管外科 アシスタントドクター(海外留学)
北里大学医学部 胸部外科 講師
群馬県立小児医療センター 心臓血管外科 部長
北里大学医学部 心臓血管外科 准教授
北里大学医学部 心臓血管外科 教授
現職歴 ;
麻布大学 客員教授
田原・アショフの会 会長
大分大学医学部 非常勤講師
北里大学医学部 心臓血管外科 元教授
中国医学科学院/ 北京協和泰達医科大学/ 泰達国際心血管病医院 客員教授
日本循環器学会 専門医
日本胸部外科学会 指導医
日本外科学会 専門医・指導医
日本成人先天性心疾患学会 専門医
日本心臓血管外科学会 専門医・修練指導者
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難病指定医
麻酔科標榜医
認知症サポート医
臨床研修医指導医
日本医師会認定産業医
日本体育協会公認スポーツドクター
Ärztlichen Berufserlaubnis (ドイツ医師労働許可証) 取得
愛玩動物飼養管理士
日本小児禁煙研究会 理事 第13回学術集会会長 (2024年9月22日(日)開催)
日本小児循環器学会 評議員
日本心臓血管外科学会 評議員
日本成人先天性心疾患学会 評議員
日本ペースメーカー友の会 相談役
ペットセラピー(🦮と🐈)
スポーツ実践(🏌️と🏇)と観戦(⚽️と⚾️)
ミヤシュラン探訪...


日本は現在、少子高齢化と人口減少という大きな社会構造の変化の中にあります。医療の現場では、複数の慢性疾患を抱える高齢の患者さんや、生活環境・社会背景まで含めた総合的な支援を必要とする方が増えてきています。こうした時代においては、特定の専門領域だけにとどまらず、患者さんを全人的に捉え、幅広く診療できる力が医師に求められていると感じています。
そのような認識のもと、私自身も現在、総合的な診療能力をさらに高めるため、総合医育成プログラムに参加し、リスキリングに取り組んでおります。本プログラムは、専門領域で経験を積んだ医師が、総合医としても活躍できる実践的な能力を効率的に習得することを目的としたオンラインコースです。日々の診療と並行して学びを深めることで、より質の高い医療を地域の皆さまに提供できるよう努めております。
医療を取り巻く環境は絶えず変化しています。しかし、その中でも変わらないのは、患者さん一人ひとりに寄り添い、その方にとって最善の医療を考え続ける姿勢だと思います。これからも医療者として学び続けながら、地域の皆さまに信頼され、安心して相談していただける病院であり続けたいと考えております。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。